熊本大学 URA推進室

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分析Topics

OAジャーナル投稿の際の注意事項
学会発表の際の注意事項

ハゲタカジャーナルへの投稿リスク・ハゲタカ学術集会への参加リスクについて(注意喚起)

 昨今問題となっている悪質性の高いオープンアクセスジャーナル(ハゲタカジャーナル)やハゲタカ学術集会について、注意喚起のためお知らせします。

 近年、研究成果の公開についてオープンアクセスジャーナルへの投稿が増加しておりますが、これに乗じて単なる金儲けの手段として活動する悪徳な出版社も一部にはあるようです。“predatory publishers”と称され、predatory = 略奪するという意味からハゲタカジャーナルとして訳されています。

 ハゲタカジャーナルへの投稿は、不当な掲載料の請求を受ける、取り下げを確認するまで二重投稿のリスクを抱えるなど、研究活動への大きな支障となります。また、ハゲタカジャーナルへの掲載はかえって自身の業績評価を下げ、その影響は本学全体の評価に及ぶ可能性もあります。

 また、学術集会についても同様に、金儲けの手段として研究者が支払う高額な費用を目的に開催されるハゲタカ学術集会が存在します。例えば、一流の講演者が出席するような宣伝をしていたが実際にはその学術集会に関与していなかったという事例や、正当な学術集会と提携しているように偽って参加者を集めていたという事例、参加者全員に賞を与えるという不適切と考えられる事例等があります。

 つきましては、下記をご参照いただき、ハゲタカジャーナルへの投稿リスク・ハゲタカ学術集会への参加リスクを十分ご理解の上、論文の投稿先や学会発表先を慎重にご検討下さいますようお願いいたします。


オープンアクセス(OA :Open Access)とは?

 主に学術情報の提供に関して使われる言葉で、学術情報をインターネットから無料で入手でき、技術的、法的にできるだけ制約がなくアクセスできるようにすることを指します。科学技術振興機構(JST)では、「オープンサイエンス促進に向けた研究成果の取扱いに関するJST の基本方針」を示しており、JSTが実施する研究プロジェクトの成果公開におけるOAの方法として、

  1. 著者最終稿等を国の施策として進めている機関リポジトリ等を活用し公開する方法(=グリーンOA)
  2. 研究者等がオープンアクセスを前提とした学術誌等に研究成果論文を発表する方法(=ゴールドOA)
を掲げており、1.を推奨、2.は選択可能としています。ゴールドOAでは掲載料(APC:Article Processing Charges)は著者が負担することになっており、研究費をAPCに当てられることや従来のジャーナルよりも投稿から掲載までの期間が短いことから、一般に浸透しつつあります。


ハゲタカジャーナル(predatory journals)とは?

 Web出版の利便性を悪用して、掲載料によって不当に利益を得ようとする出版社が一部に存在します。そのような出版社では、編集顧問・査読委員会による査読が行われておらず、サイトの更新も遅く頻度も適切とは言えません。また、これらのジャーナルに論文が掲載された場合、逆に業績としてネガティブな評価を受ける危険もあります。このような単なる金儲けの疑いのある出版社は“predatory publishers”と称され、predatory = 略奪するという意味からハゲタカジャーナルとして訳されています。このpredatory publishersのリストがこの言葉を最初に用いた米国コロラド大学のJeffrey Beallによって公開されています。

ハゲタカジャーナルのリスト
Beall's List of Predatory Journals and Publishers
(現在、更新停止中)


また、Journal of Advanced Nursingに掲載された以下の記事の中で、ハゲタカジャーナルへの投稿に繋がる5つの原因が考察されていますので、抜粋してご紹介します。



Clark, A. M. and Thompson, D. R., “Five (bad) reasons to publish your research in predatory journals.” J Adv Nurs. 2017 Nov; 73(11):2499-2501

  1. I do not care about my external reputation
  2.  ハゲタカジャーナルに掲載されることが自身の評価を大きく損ない、雇用の機会さえ奪いかねないほどに危険であることに気づいていないケース。博士課程の学生や若手研究者等これからキャリアを積んでいこうとする経験の浅い研究者がターゲットにされています。

    指導教員らは学生や若手研究者とハゲタカジャーナルに論文が掲載されることのリスクについて議論し、最適な雑誌を選択する技術と能力を開発する必要があります。


  3. I do not believe in myself or my work
  4. 複数のジャーナルから何度もリジェクトを受け、自信を喪失し、確実にアクセプトしてくれそうなハゲタカジャーナルに頼ってしまうケース。リジェクトを重ねながらも信用のある雑誌に投稿し続けるには自らの研究に対する健全な信頼が必要です。

    指導教員らは自らの経験を共有し、若手研究者に自信を与え、信用できるジャーナルへの投稿意欲を持たせることが重要です。


  5. Publication numbers count most
  6. 論文数を重視した業績評価の結果、簡単に掲載数を増やせるハゲタカジャーナルに投稿してしまうケース。

    学術成果を評価しその責任を負う者は、各研究者が影響力のある信用できるジャーナルで論文を出版するよう、リーダーシップを発揮することが求められます。


  7. I cannot be bothered to read
  8. ハゲタカジャーナルが意図的に使う著名なジャーナルにそっくりな雑誌名に惑わされてしまうケース。悪徳な業者は誤解を誘導するような論文誌名を用い、流通する学術雑誌へ勤勉な調査を怠る者をターゲットにします。

    研究者が出版社の正体を見極めるべく情報収集を重ね、また指導教官らが模範を示すことが求められます。


  9. I have given up
  10. 投稿先がハゲタカジャーナルであり、その影響を承知したうえで投稿するケース。一部の限られた見識に基づく判断に固執し、国際的な外部評価を無視することは、ハゲタカジャーナルに掲載されるリスクを自身だけでなく同僚や所属機関にも負わせることになります。

    ハゲタカジャーナルへの掲載が研究者個人だけでなく所属機関の評判を傷つけることにもつながることを各研究者が自覚することが重要です。


ハゲタカ学術集会(predatory conferences)とは?

会議や学会発表の査読をきちんとせず、参加費などの売り上げ収益目的で開催される学術集会。正当な学会と連携しているように装ったり勘違いしやすいタイトルで開催し、高額な登録料や参加料を取るケースがあります。また、直前になって目玉となる講演や学術集会そのものが中止され、返金に応じない場合もあります。対象分野があまりに広い場合は要注意です。参加者の全員に賞が授与される場合もあり、業歴として受賞歴欄に掲載した賞が実際はハゲタカ学術集会のものだったりすると、ネガティブな評価を受ける危険があります。